内部被曝の真実に迫ろうと思っています。安全な食品を見分ける力をつける事が目的です。
必要以上に恐れない、無頓着にならないことが大切だと思っています。

さて、人類は天然放射性物質の中で誕生し、存続を続けてきました。
その中には、放射性カリウムカリウム40)のように、人体に必須物質であるカリウムの中に一定量存在し、その分の内部被曝をいやおう無く受けるものも存在します。

ただ我々人類は現在も存続している訳ですから、カリウム40が致命的となるようなものではなかったと言えます。
カリウム40は12.8億年という長い半減期を持ちます。放射性物質の中では威力が低く、自然界に存在するカリウム中0.0117%しか存在していません。カリウム40の存在比率が、遺伝子による再生産システムを壊すほど大きかったとしたら、私達人間は存在せず、別の形の生物が地球上に繁栄していたかもしれません。

生体内で必須であるカリウムはその量を一定量に保つようにコントロールされています。
ナトリウムポンプ(イオン交換ポンプ)という言葉に聞き覚えはありませんか?Na+/K+交換ポンプ。高校の生物に出てきた言葉です。ATP(アデノシン三リン酸)ADP(アデノシン二リン酸)ATP分解酵素、これらの単語が羅列しているページです。何となく思い出しましたか?体液のナトリウム濃度が一定なのは一般常識になっていますが、体液浸透圧やPHの維持もカリウムは関与しています。
これらを恒常性維持機構といいます。

カリウム40は一定量以上に体内に蓄積されませんが、その分の内部被曝は受けています。
大き目のバナナ1本分(150g)で考えてみましょう。
この中にカリウムは540mg含まれています。カリウム1g中カリウム40は30.4ベクレル含まれていますから、
30.4×0.54=16.416
16.4ベクレルの内部被曝を受けます。
これは約0.1μSvの実効線量となります。

でも、そんな被曝は生まれた時から当たり前のように存在し、そして、それを前提として身体は、それに対向し生き延びる機能を発達させてきた。それが恒常性維持機構です。必要以上に濃縮されずに、尿、汗、便などで体外へ排出されます。

だから言えることですが、その機能を超えた放射性核種による内部被曝は、人体に悪影響を及ぼす可能性大だと言えます。

ところが、恒常性維持機構の動静と放射性核種、両方の知識が必要なのに、「セシウムカリウムに似ている。1価の原子で+1の正イオンとなる、だから恒常性維持機構が働いてそんなに人体に悪影響など出ない」という方がいます。

しかしながら、カリウムセシウムは似て非なるものです。

セシウム137は人体中に入ると、ほぼ100%胃腸管から吸収されます。
次に血液で全身に輸送されますが、その際、大まかに二つの経路へと別れていきます。

<全体の10%の行方>
吸収されたセシウム全体中10%の動静: 8割は血中から腎臓へ直接運ばれ膀胱から尿として速やかに排出されます。
2割は大腸上部にいき便となって排出されます。
この経路を辿るセシウムは大人は約2日、10歳の子どもは6日、5歳の子どもは9日で体外へ出て行きます。

<全体の90%の行方>
吸収されたセシウム全体中90%の動静: 8割は血液で全身に輸送され時間の経過と共にカリウムと置き換わり筋肉部分へ集まってきます。(体内残留)
2割は大腸上部にいき便となって排出されます。
この経路を辿るセシウムは、大人は約110日、10歳の子どもは50日、5歳の子どもは30日で体外へ出て行きます。

<全体の90%の行方>のセシウムの体内残留率の年齢差は体重の変化や体内のカリウム量に関連します。(体重が重い大人は約110日、体重が軽い5歳の子どもは30日)
また、食物中のカリウム摂取が多いとセシウムの排泄が増加します。

セシウムの排泄を増加させる(促す)カリウムの多い食物 (100gあたり)

  • とろろこんぶ         4800mg
  • ベーキングパウダー      3900mg
  • インスタントコーヒー     3600mg
  • パセリ(乾)         3600mg
  • バジル(粉)          3100mg
  • ココア(純)         2800mg
  • 味付け海苔         2700mg
  • パプリカ        2700mg
  • 紅茶           2000mg
  • だいず(きな粉)      1900mg
  • 山椒            1700mg
  • カレー粉          1700mg
  • あずき          1500mg
  • しょうが          1400mg
  • 卵白            1300mg
  • ポテトチップス       1200mg
  • マッシュポテト      1200mg
  • 煮干            1200mg
  • 黒砂糖           1100mg
  • ピスタチオ           970mg
  • 豆味噌           930mg
  • 納豆ひきわり       700mg
  • フライドポテト        660mg
  • アマランサス        600mg
  • チョコレート        440mg

1963年当時、世界中が核実験で汚染されたことを現在の状態と比べ、当時のほうが汚染度が高かったなどという方がいらっしゃいます。
以下が真実です。

1963年「白米の全国平均値」

ストロンチウム90                 

0.269ベクレル      

セシウム137

4.179ベクレル

全国平均値のもっとも高かった1963年、セシウム137の最高値は約 10 Bq/kg でした。

つぎに、玄麦のデータです。

<Bq/kg>

1963年「玄麦」

ストロンチウム90                 

12.3ベクレル      

セシウム137

43.6ベクレル

当時、これらの値は“mBq/kg”という“Bq/kg”より“1000分の1”小さい単位で測定され、12300だ!43600だ!高い!と驚かれていました。

現在の日本では12.3ベクレルと43.6ベクレルと表示されますね。

ちなみに、フランス⇒15300ミリベクレル(=15.3ベクレル)西ドイツ⇒15200ミリベクレル(=15.2ベクレル)スロバキア⇒5200ミリベクレル(=5.2ベクレル)でしたので日本はドイツやフランスと同じくらいの汚染でした。

よく、1950年頃から1980年頃にかけての折れ線グラフがテレビで出てきて、「ほらこんなに高かったのです」とやっていますが、その頃の資料における単位は“mBq/kg”です“Bq/kg”に直したら“1000分の1”になるのです。騙されないでください。

これらの経験は貴重です。
当時内部被曝した人間が今の世界に溢れているからです。
これは確かに、「セシウム汚染がこの程度であればカリウム40の時と同じように遺伝子による再生産システムを壊すほど大きいダメージを受けなかった」という事を示唆しているように考えられます。

毎日食べるお米や毎日飲む牛乳はセシウム137が10ベクレル以下が理想。
時々食べる食品は45ベクレル以下が理想。

カリウム40は12.8億年という長い半減期のため放射性物質の中では威力が低いのですが、セシウム137は30年というカリウム40に比べてかなり短い半減期のため、威力が高くなります。
体内動態はカリウムと類似していますがこの点で内部被曝の危険度が違います。

絶対に、楽観視できるものではないのです。
でもだからといって、10ベクレル以下で大騒ぎすると、本当に避けなくてはならない値埋もれさせてしまい、逆効果となる。それはあまりにも危険な気がします。

その仮定の下、以下の数値を参考にして避けるべき食品を考えます。

  • いわき市 / 1月7日 / ユズ         / 930ベクレル
  • 南相馬市 / 1月6日 / 切り干し大根      / 800ベクレル
  • 二本松市 / 1月6日 / あんぽ柿        / 175ベクレル
  • 二本松市 / 1月6日 / わらび塩漬け      /  92ベクレル
  • 二本松市 / 1月6日 / 梅干          /  86ベクレル
  • 南相馬市 / 1月6日 / 唐辛子         /  52ベクレル

水産庁のデータより抜粋

福島県沖はまだまだ高い値が続いています。とくに高い魚は。

福島県沖」

  • ウスメバル       1480ベクレル
  • キツネメバル      1310ベクレル
  • コモンカスベ       640ベクレル
  • ヒラメ          540ベクレル

 その他の県

  • 群馬県:赤城大沼  / 1月10日 / ワカサギ /   591ベクレル
  • 茨城県日立市沖 / 1月13日 / スズキ /     112ベクレル
  • 茨城県日立市沖 / 1月13日 / ババガレイ /   129ベクレル
  • 茨城県日立市沖 / 1月13日 / ヒラメ /     123ベクレル
  • 茨城県日立市沖 / 1月16日 / スズキ /     148ベクレル
  • 千葉県:手賀沼  / 1月18日 / モツゴ /     128.2ベクレル
  • 茨城県鹿嶋市沖 / 1月18日 / マダラ /     102ベクレル

  [避けたほうがよい魚]

海岸近くの海藻が多い岩礁に群れをなして棲息する / メバル

岩礁帯やテトラポッド、防波堤などの陰など沿岸に棲息する / アイナメ

浅海の岩礁に定着する / マアジ(回遊型ノドグロ・クロアジとは区別する)

沿岸の海底の砂泥地に棲息、3〜7月の産卵期に水深20cmぐらいの浅瀬にうつる / ヒラメ

沿岸の浅い海から水深 1000 m の深海までに生息する / カレイ

沿岸から大陸棚斜面の底近くに生息 / マダラ

水深30〜100mの砂泥底に生息する / コモンカスベ

海岸近くや河川に生息する / スズキ

追記

スズキ目アジ科の「ブリ」は、通常は群れを作り、やや沖合いの水深100m程度の中層・底層を遊泳する。季節によって生息海域を変える回遊魚でもあり、春から夏には沿岸域に寄って北上し、初冬から春には沖合いを南下する。但し温暖な南方海域では回遊せずに所謂「瀬付き」になるものもいる / ブリ

追記

上記に書いたお話をもう少し詳しくしますね。

バナナ1本ー150gには540mgのカリウムが含まれ、その内、放射性カリウム(放射性カリウムカリウム40))は16.4ベクレル含まれていて、実効線量は0.1μSvでした。

それでは、セシウム137についても同じように考えてみましょう。

もし、セシウム137をバナナの放射性カリウムカリウム40)と同じ16.4ベクレル食べてしまったとしたら、どうなるのでしょうか。

簡単に計算できます。

セシウム137は10000Bqで0.13mSv(=130μSv)の実効線量です。

ということは、1ベクレルで0.013μSvの実効線量を受けるという事になります。だから、

16.4×0.013=0.2132μSv

セシウム137の実効線量は0.2μSvとなります。

カリウム40の実効線量は0.1μSvでしたから、だいたい大雑把に考えて2倍のダメージを受けるということです。

難しいかも知れませんが、間違ってはいけないために以下を説明に加えます。重要です。

単純に環境中の物質(地球の規模)として考えた場合、カリウム40は半減期が12.8億年と長いスパンで減っていくため、1グラム中の放射能強度は260000(26万)ベクレルですが、セシウム137は半減期が30年と短いスパンで減っていくため1グラム中3220000000000(3兆2千2百億)ベクレルという高い放射能強度を持ちます。そう、地球の規模ならカリウム40からすると、セシウム137は、12000000倍(1200万倍)の強さを持つ放射性核種なのです。

これは逆にいえば、カリウム40の(1)分の放射能セシウム137(<1200万分の1)分の放射能が等しいということになります。

物凄く微量カリウム40の1グラム分の放射能。ということです。

えっ何を間違うの?

それは、ベクレルとグラム(Bqとg)の違いです。

バナナ約2本分の中には1gのカリウムが含まれています。カリウム1gの中にカリウム40は約0.0117%含まれていて、そのベクレル数は30.4ベクレルです。

ということは、カリウム40は何グラム含まれている事になるのでしょうか?

カリウム1gの中にカリウム40は、0.0117÷100×1=0.000117ですので、0.000117gということになります。

カリウム40

30.4ベクレル=0.000117g

1÷0.000117×30.4=259829.0598

1g=259829.0598≒260000ベクレル(26万ベクレル)

バナナ2本分の中のカリウム40は凄く少なく、たった0.000117gの量です。それを1gに換算すると、地球の中のカリウム40と同じ値でした。

それでは同じようにしてセシウム137が30.4ベクレルの汚染を受けた食べ物に何グラム入っているのか計算してみましょう。

セシウム137

1g=3220000000000ベクレル(3兆2千2百億ベクレル)

1÷(3220000000000÷30.4)=0.00000000001

30.4ベクレル≒0.00000000001g

気が遠くなるくらい物凄く少ない量です。30.4ベクレルの汚染食品に含まれるセシウム137の量は、想像できないくらい少ない0.00000000001gしかありません。
ちなみにmgで表すと、

カリウム40

30.4ベクレル=0.117mg

セシウム137

30.4ベクレル≒0.00000001mg

まとめ
セシウム137は、「同じベクレル数の汚染食品」の場合、カリウム40に比べ、放射線を2倍の強さ分受けます。それなのに、含まれるグラム数は、遥かに小さい。きわめて少量で危険度が大きい放射性核種だということがいえます。

これは、尿から出るセシウムがmgで表記されている場合、小さな値でも身体に蓄積されたベクレル数はかなりなものになるということです。

そして、尿から出るセシウムをベクレルで表している場合、よほど高くない限り摂取した量は少ないということです。

追記2

ベクレルの意味

ベクレルを、分かり易く例え話で説明します。

具体的にカリウム40とセシウム137を使います。

カリウム40は、半減期12.8億年でβ崩壊で約9割がカルシウム40に壊変して安定し、1割は電子捕獲でガンマ線を放出してアルゴン40になります。
セシウム137は、半減期30年でほとんどがβ崩壊でベータ線を出しバリウム137mに壊変し、半減期2.55分でガンマ崩壊し、ガンマ線を放出してバリウム137になり安定します。

ベクレルは1秒で原子核が崩壊して放射線を放つ量、すなわち放射能の量です。

これを、例えてみますと。

カリウム40は、中に玉が2個入った袋のようなものとします。
セシウム137は、玉1個入りの中袋が入った大袋のようなものとします。2重袋です。

カリウム40の袋が押されて潰れると、中から2種類の玉が出てきます。その時、中の空気も出て行きます。
玉の一つはカルシウム40、もう一つはアルゴン40です。そして出てきた空気は放射線(ベータ線+ガンマ線)です。

セシウム137の大袋が押されて潰れると、中から中袋が出てきます。その時、大袋の中の空気も出て行きます。2.55分後、中袋が潰れて、中から玉が出てきます。その時も、中袋の中の空気は出て行きます。
中袋はバリウム137m、大袋から出た空気は放射線(ベータ線)です。中袋から出た玉はバリウム137、中袋から出た空気は放射線(ガンマ線)です。

カリウム40の袋とセシウム137の袋は、大きさも重さも違います。中に違うものが入っていますしね。

で、この潰れた袋は放射能にあたります。玉を出して空気を出す力(強さ・能力)を持ち、そして出したからです。
(潰れていない袋は放射性物質です。カリウム40は12.8億年という長い半減期を持ちますから、1秒間の間に潰れる袋は少なくて、潰れずにただ存在し周りに影響を与えない袋もあります。セシウム137は、半減期30年ですから、1秒間の間に潰れる袋はカリウム40より多いし、2回潰れるから、1つの袋<放射性物質>が2回分の放射能を持ちます)

<例えば、16ベクレルをイメージで表すと、大量の潰れていない袋の中に潰れた袋が16個ある状態がカリウム40。少量の潰れていない袋の中に潰れた袋が16個ある状態がセシウム137(しかも、潰れた袋はもう一度潰れます)>

ベクレルはこの潰れた袋を指しているのです。この袋の数、量を指しています。量というと放射線を指しているように誤解しがちですね。強さも放射線を指しているように感じてしまいます。日本語の落とし穴です。指しているのは放射線源の放射能です。(なかなか日本語は難しいです。1秒間に潰れる袋の量をベクレルと呼んでいます)

だから、同じベクレル数なのに、出る放射線の量や種類も違うし、人に影響を与えるシーベルト数も違う。

同じベクレル数とは、カリウム40の袋とセシウム137の袋の潰れる数が同じという感じです。

カリウム40が16.4ベクレルの実効線量は0.1μSv

セシウム137が16.4ベクレルの実効線量は0.2μSv



※文章内のデータは全て農林水産省厚生労働省が発表した資料の数値を基に書かれています。
制動放射は話が複雑になるので、ベクレルの説明に含まれていません。
※解りにくい説明(この・その、が何を指しているか等)に詳しい説明を加えました。2012/2/9