さて、政府が発表したキュリウム244についてのお話です。

題名にも書きましたが、キュリウムっていったいどんな物なのでしょうか?

実は、原子炉燃料から放出される自発核分裂による自発中性子を測定して燃焼度を評価するためのバロメーターだったりします。

前回ウラン238プルトニウム240などの自発核分裂による自発中性子の例で書きましたが、もっと詳しく書くとこれらの核種から生まれるキュリウム244が主要な中性子放出核種になります。(自発核分裂中性子発生率はプルトニウム240よりキュリウム244の方が桁違いに高いのです。他のキュリウム等と比べても桁が違いますので244が主要になります。ただ、炉内の含有量はプルトニウムの方が桁違いに多いですけれどね)

まず、ウラン238から生まれる場合

キュリウム244は、ウラン2386回の中性子吸収反応により生成されます。

U238 → U239(β崩壊) → Np239(β崩壊) → Pu239Pu240Pu241Pu242 → Pu243(β崩壊) → Am243 → Am244(β崩壊) → Cm244

プルトニウムから生まれる場合

キュリウム244は、プルトニウム239で5回、プルトニウム240で4回、プルトニウム241で3回、プルトニウム242で2回の中性子吸収反応により生成されるものです。

Pu239Pu240Pu241Pu242 → Pu243(β崩壊) → Am243 → Am244(β崩壊) → Cm244


ちなみに、キュリウム242の生成過程は、

Pu241(β崩壊)→Am241→Am242→Cm242


冷却期間5年のウラン燃料の例 <停止したばかりのデータが見つからないので代用、5年経ってもこれだけの力があるよ〜的な。>

キセノン135が核分裂で生成される確率(核分裂収率)

中性子吸収によって生まれる核分裂収率は、7.17%

プルトニウムの自発核分裂によって生まれる確率は、7.23%

キュリウムの自発核分裂によって生まれる確率は、7.48%

使用済燃料1トンあたりプルトニウム9.2㎏・キュリウム0.0353㎏

内訳は、プルトニウム240が2.43㎏・キュリウム244が0.0331㎏

使用済燃料1トンあたりの自発核分裂中性子発生率

プルトニウム240は、2.43㎏で[2.41E+06(n/s)]、2,410,000 中性子毎秒

これって、1㎏でおおよそ1,000,000中性子毎秒(1秒間に発生する中性子の個数)ということ。

核分裂時に放出する中性子の数の平均値νpは2.8ですから

1㎏でおおよそ1秒間に357,100回の自発核分裂をしています。

キュリウム244は、0.0331㎏で[3.78E+08(n/s)]、378,000,000 中性子毎秒

これは、1㎏だと11,400,000,000中性子毎秒ということ。

核分裂時に放出する中性子の数の平均値νpは3.0ですから

1㎏でおおよそ1秒間に3,800,000,000回の自発核分裂をしています。

<1号機の中で自発核分裂し、中性子を発生させているプルトニウム240とキュリウム244>

1号機に積まれた燃料は69tです。

プルトニウム240は、使用済燃料1トンあたり2.43㎏含有されていて2,410,000 中性子毎秒ですから、

2,410,000×69=166,290,000     
166,290,000中性子毎秒

核分裂時に放出する中性子の数の平均値νpは2.8から、

166,290,000÷2.8≒59,390,000        
(1号機の中で1秒間に自発核分裂している回数) 

キュリウム244は、使用済燃料1トンあたり0.0331㎏含有されていて378,000,000 中性子毎秒ですから、

378,000,000×69=26,082,000,000  
26,082,000,000中性子毎秒


核分裂時に放出する中性子の数の平均値νpは3.0から、

26,082,000,000÷3≒8,694,000,000       
(1号機の中で1秒間に自発核分裂している回数)


1号機の中で、キュリウム244とプルトニウム240が、1秒間に発生させる中性子の数

166,290,000 (中性子毎秒)+26,082,000,000 (中性子毎秒)=26,248,290,000

26,248,290,000 n/s (中性子毎秒)

というわけで、結構な数字です。これはあくまで冷却期間5年のウラン燃料から考えたものですから、止まったばかりの燃料では、もっと値が大きくなるのでしょうね。

そういえば、定期点検などで、原発を止めた場合、再稼動する際には、新しく中性子をぶつけなくても、キュリウム244やプルトニウム240の自発核分裂で発生する中性子で稼動できるそうです。ふ〜ん。

原子炉内の臨界を維持する中性子のサイクル

U235核分裂 → 高速中性子250個 → 高速中性子によるU238の核分裂 (加算)

中性子258個(減速を始める)→ 炉外に漏れ出る50個 → U238の共鳴吸収

で吸収される33個 →(減速する)熱中性子となる175個 → 炉外に漏れ出る13

個 → 他の構成核種に吸収される62個 → 残り100個がU235に吸収されて核分

裂、平均2.5個の高速中性子を生み高速中性子250個ができる。


燃料の燃焼度が低い場合には、プルトニウム238の(α,n)反応中性子放出率(アルファ線は酸素などとの核反応によっても中性子を放出します)とキュリウム244の自発核分裂中性子放出率が同程度になるという特徴があるそうです。<(α,n)反応では中性子が1個1個バラバラに放出されますが、核分裂では多くの場合複数個の中性子が同時に放出されます。>

軽水炉の燃料はウラン235を3〜5%程度に濃縮した「低濃縮ウラン」ですが、

運転中にウラン238中性子捕獲で次々とプルトニウム239に変化し、これが

更に核分裂をしています。原子力発電所の平均30%は生成されたプルトニウム

核分裂で発電されていると言われており、燃料の燃焼開始から、1年後には

20%、2年後には40%、3年後には60%がプルトニウムによる発電の割合になる

とされています。



1号機のペデスタル内の燃料も、2・3号機の燃料もどんな状態なのか、ある程度予測はできても、実際のところは分からない。確率的な予測がどこまで真実に迫れるのか?
制御できていない1号機のペデスタル内の燃料は今も多くの中性子が発生し、核分裂は続いています。(未臨界でもね)

科学者のみなさん

いろいろな効果のせいで、臨界にはなかなか達しないだろうというのも解りますが、やっぱり、爆発はした訳で、出してはならないモノまで出してしまったでしょう。もとはといえば、この原発を運転させた時に出る核廃棄物を安全に保管するために、原子炉で核分裂を起こさせ、半減期の長い核種を、短い核種に壊変させることが目的だったりしたでしょう?それは、半減期の長い核種が外に出ることで、この美しい地球を汚したくなかったからですよね?
悪さをせずに眠っていたウランを掘り起こし、多種多様な核種を生み出してしまった責任を取りたかっただけですよね。
でもそのうちに、ミイラ取りがミイラになって、だって、知識欲が満たされるのは楽しいでしょう。わたしだって、同じですから、教授たちもそうですよね。
ガラス固体化したって、どんなにすごい物質に閉じ込めたって、何時かは劣化する。核廃棄物中の長い半減期核種は本当に大丈夫なのか?本当は不安でしょう?

もうやめませんか?