3号機はプルトニウムを含むMOX 燃料です。

プルトニウムは、粒子線であるアルファ線を出す(アルファ崩壊)放射性物質です。アルファ線は、原子核から放出される放射線の一種で、陽子2個と中性子2個からなるヘリウムの原子核で、物質中をすごく短い距離だけしか移動できないので、運動エネルギーが熱エネルギーに変わって熱を出し、熱いという特徴を持ちます。

MOX 燃料の特徴と取り扱い

核分裂生成ガス放出率は現時点ではウランペレットより若干高めで、燃料棒の内圧が上昇する傾向になること。(ウランの燃料棒よりも、上部に空間を多くあけている)

プルトニウムの熱中性子吸収断面積がウランより大きいこと。

・制御棒、ほう酸水による中性子吸収量が相対的に減少すること。(効きが悪い)

プルトニウムの共鳴吸収がウランより大きいこと。(共鳴する速度の中速中性子の吸収)

MOX燃料では、含まれるプルトニウム238、プルトニウム239、アメリシウム241のアルファ崩壊時の発熱により、ウラン新燃料に比べて約1万倍も発熱量が大きい。したがって、MOX新燃料は貯蔵には発熱に対する対策が必要になること。

MOXの新燃料はガンマ線源であるアメリシウム241を含むため、燃料表面での放射線のレベルはウランの新燃料に比べて約200〜300倍にもなる。

MOX 使用済燃料の中性子線源強度が大きく、γ線源強度が小さくなる。中性子の量は原子炉停止後4日の時点で使用済みウラン燃料の20倍である。

MOX 使用済燃料はウラン使用済燃料に比べ、高次のアクチニド核種が多く、放射性崩壊しながら放射線を放出し続け、冷却期間が数十年以上では崩壊熱の主成分となる。ただし、原子炉停止後の数十日間、ウラン238中性子捕獲反応によって生成したウラン239、ネプツウム239のベータ崩壊及びガンマ崩壊熱が主となる。

MOX 燃料集合体の外周部で出力が高くなる傾向になること。

・ 貯蔵設備の冷却能力を高くする必要があること。

以上は

以前書いたブログ『その6 「限界線量以下の値だから安全」ではなくて、人間ここまでは我慢できる、という値にすぎない』

http://d.hatena.ne.jp/idoa/20110402/1301776531

に掲載した内容の一部です。

5月に入ってからの3号機全体の温度の急上昇は「ああ、やっぱり」というものです。

4月までは、たぶん、ホウ酸水注入系(SLC)のホウ酸水注入ポンプでホウ酸水を入れていたんじゃないかな?と思っていました。(濃度の高いホウ酸水を入れ続けていれば、MOX燃料だけど大丈夫かなと思っていました)

5月に入って温度が上昇傾向にあるのを見て、給水系(CW/FW)の原子炉給水ポンプで大量に注水できる方がよいと判断したのでしょうか?MOX燃料に対しての見通しが甘いなと思いますが、どんな人達が判断したのか(まっ、影響力のある人達=教養人とは限らないしね)

12日より注水経路を徐々に復水・給水系(CW/FW)の原子炉給水ポンプに切り替えようとしたところ、この3号機全体の温度の急上昇という事態を招いてしまったというところです。

ホウ酸水注入ポンプでホウ酸水を入れなければ、もっと事態が悪くなることをデータによって解った方々があわてて元のホウ酸水注入系(SLC)に戻しているという状態でしょうか。

1号機と違って3号機は、MOX燃料の割合が高いから、1号機のようにはいきません。

1号機は悲惨な状態でも、温度は安定しているから、1号機と同じ、給水系(CW/FW)の原子炉給水ポンプを使えば3号機も温度が下がると思ったのでしょうか?

上記に書いた、MOX 燃料の特徴と取り扱いを読んでも分かるとおり、まだ、《原子炉停止後の数十日間、ウラン238中性子捕獲反応によって生成したウラン239、ネプツウム239のベータ崩壊及びガンマ崩壊熱が主となる》ことをふまえて、ホウ酸水を入れ続けなければいけなかったんじゃないでしょうか。

もう、その期間は過ぎたと考えて、温度を下げるのに大量の水を選択したのでしょうか。

追記

燃料棒は高温になっているはずですから1号機2号機につづき3号機も燃料溶融しています。

3号機はすでに凄まじい爆発が起こっていますから、原子炉建屋はもちろんのこと、格納容器等も大きな損傷を受けているはずです。

ということは、燃料棒の上部に溜まっている核分裂生成ガスは燃料溶融によって、遮へい能力を有する専用の取扱設備、格納容器や原子炉建屋の遮蔽を受けず、自由に空へ放出されます。

ますます、福島大の上空の放射線量調査が重要になります。(福島大学の研究室のみなさん頑張ってください)

臨界量について

プルトニウムの臨界量はウラン235の3分の1です。
燃料溶融によって溶液状になったプルトニウムは固体より少ない量で臨界量に達します。
爆発するためには、超臨界を大きく越える量を必要とするし、制御棒も一緒に溶けて中性子を吸収するハフニウムやホウ素もプルトニウムと混在するでしょうから、爆弾のような核爆発はそう偶然に起こったりしないと思います。
とはいっても、プルトニウム240のような自発核分裂をやけに起こしやすい(中性子放出)性質を持ったものが使用済みMOX燃料には他にも存在しますので、プルトニウム239がその中性子をキャッチして核分裂反応を起こすことはもちろんあるだろうし、プルトニウムが臨界量に達した時の放射線量は優に100Sv/hを越すようなものになるでしょうね。

ニュースを読んで腹が立った私

東京電力は15日、福島第一原子力発電所3号機の原子炉で再臨界が起きないよう、原子炉の冷却水に、中性子線を吸収するホウ酸を溶かした上で、同日から原子炉への注水を始めたと発表した。

今までホウ酸水を入れてなかったんかい!!し、信じられない。う〜む