「限界線量以下の値だから安全」ではなくて、人間ここまでは我慢できる、という値にすぎない。

こんな質問がきたので今回は、それにお答えしつつのおはなしです。
 「プルトニウムはウランに比べて桁違いのエネルギーをもっています」どういう根拠でしょうか、少なくとも桁違いということはないと思います。水素爆発は水素が爆発して起こるわけですから核燃料の違いは関係なくて建屋の構造とかの違いじゃないでしょうか

 原子力発電所は、地震津波が原因で冷却水を供給することができなくなりました。そして、炉心が空だきの方向へ向かう事故が起こってしまい、中性子の減速剤としての炉心の水が無くなっていき、熱中性子が無くなって高速中性子が増える状態になり、熱中性子を吸収して核反応をするウラン235核分裂を大部分が止めたと考えられます。海水を入れた部分は制御棒やホウ酸の注入がある程度、効いたと思います。
 通常運転の核反応中はジルコニウムの被覆管の中心部は約2000℃になっていて。約1000℃を越えると水蒸気との反応が始まるので(被覆管中のジルコニウムが水と反応し、水素が発生する。)、ジルコニウムの融点は約1900℃ではありますが、被覆管の表面は約300℃に抑えています。(燃料棒の中心から端までのわずか5mmで約1700℃の温度差をつくらなくてはならないので冷却水を毎秒3mもの速さで循環させているそうです)
 1号機の水素爆発は冷却水を充分供給できず炉心の燃料棒の一部が破損し、被覆管中のジルコニウムが水と反応し水素が発生、水素は配管などを通じて格納容器の外に漏れだし、建屋内上部にたまっていったと思われます。
 水素は、空間内の体積の4%以上を占めると、酸素と反応し爆発する性質があるので天井付近で爆発し、爆風は建屋の側面を崩し横に飛び、天井が丸ごと建屋内に落ちてきたと考えています。

3号機はプルトニウムを含むMOX 燃料です。
プルトニウムは、粒子線であるアルファ線を出す(アルファ崩壊)放射性物質です。アルファ線は、原子核から放出される放射線の一種で、陽子2個と中性子2個からなるヘリウムの原子核で、物質中をすごく短い距離だけしか移動できないので、運動エネルギーが熱エネルギーに変わって熱を出し、熱いという特徴を持ちます。
MOX 燃料としては、
核分裂生成ガス放出率は現時点ではウランペレットより若干高めで、燃料棒の内圧が上昇する傾向になること。(ウランの燃料棒よりも、上部に空間を多くあけているらしい)
プルトニウムの熱中性子吸収断面積がウランより大きいこと。
・制御棒、ほう酸水による中性子吸収量が相対的に減少すること。(効きが悪い)
プルトニウムの共鳴吸収がウランより大きいこと。(共鳴する速度の中速中性子の吸収)
MOX燃料では、含まれるプルトニウム238、プルトニウム239、アメリシウム241のアルファ崩壊時の発熱により、ウラン新燃料に比べて約1万倍も発熱量が大きい。したがって、MOX新燃料は貯蔵には発熱に対する対策が必要になること。
MOXの新燃料はガンマ線源であるアメリシウム241を含むため、燃料表面での放射線のレベルはウランの新燃料に比べて約200〜300倍にもなる。
MOX 使用済燃料の中性子線源強度が大きく、γ線源強度が小さくなる。中性子の量は原子炉停止後4日の時点で使用済みウラン燃料の20倍である。
MOX 使用済燃料はウラン使用済燃料に比べ、高次のアクチニド核種が多く、放射性崩壊しながら放射線を放出し続け、冷却期間が数十年以上では崩壊熱の主成分となる。ただし、原子炉停止後の数十日間、ウラン238中性子捕獲反応によって生成したウラン239、ネプツウム239のベータ崩壊及びガンマ崩壊熱が主となる。
MOX 燃料集合体の外周部で出力が高くなる傾向になること。
・ 貯蔵設備の冷却能力を高くする必要があること。
 よって、3号機では、1号機と違い、相当の時間にわたって励起状態であり、未臨界,臨界の状態が交互にくり返されていったものと思えてしょうがないのです。
 プルトニウムが検出されたことも、それを証明しているように思えてならないのです。
1号機とは様相がまったく違う3号機の爆発というよりも爆轟、爆轟波がまっすぐ上空に向かうその大きさときのこ雲のような形態に目を瞠りました。
 通常運転ならウランペレットよりMOXは約1.5倍程度のエネルギーになるよういろいろな工夫で抑えてあります。例えば、原子炉内配置や燃料集合体内の富化度分布です。また、貯蔵設備の冷却能力を高くすることや、ほう酸水濃度を上げること等、発熱に対する対策にも万全を期していた。いえ、そのはずでした。
 震災で全てが狂っていったに違いありません。そして、MOX 燃料はもともと持っていた特性を抑えられることなく発揮してしまったのでしょう。事故で格納容器内の水素・空気・水蒸気のバランスがくずれ、水素濃度が急激に増してしまったのでしょうか?ジルコニウム−水反応でできた水素と空気の混合気体の爆発に伴う、小規模な核爆発の可能性もプルトニウム検出により否定できません。
 建屋の構造、原子炉の構造は基本的に1号機も2号機も3号機も同じ、沸騰型軽水炉であるし、燃料プール冷却浄化系も使えない、原子炉補機冷却海水系も漏れている可能性ありで、トレンチの立坑に高濃度に被曝した水も溜まっています。大量の放水をしなければならない為、敷地内の土壌に被曝した水が染み込み地下水をゆっくりと汚染してゆくことになります。事の重大さに気づき、水が染み込むのも防ぎ、再浮遊も防げる合成樹脂を散布することになりました。
これからどうやって、安全に、これ以上の被害なく、廃炉にするのでしょうか。
 もうこれは、地球規模の汚染ですから、世界各国の力と助言をお願いして、自然をこれ以上破壊しないようにしてもらいたいです。これから、海流や、風向きや、地下水や、雨や、様々な現象に気を配り、国民を守ってもらいたい。 
 放射線に慣れてしまい、しきい値を広げて、国民に我慢を強いるようなことはないようにしてもらいたい。
1963年くらいまで、核保有国が散々核実験を繰り返し、汚染された地球の空気が、やっと、やっときれいになってきたのに、また汚したことを恥じてもらいたい。
「1960年ごろは今とは比べものにならないくらい汚染されていたけど、子どものころからそんな環境で育った私はなんともないですよ」などと言わないで欲しい。
そんな環境で生きてきたからこそ、子孫にはきれいな環境を維持してあげたいと思いませんか?そして二人に一人の癌発生率はそんな環境で生きてきた世代に多いんじゃないんですか?
ともかく限界線量以下だから安全とよくいわれますが、そういう意味の数字ではないですよ、どんなに少なくても、自然界にない人工の放射能を持ったものに対してたかが、まだ、百年ぐらいの経験で何もかも全てが解ってしまうなんてことは、人間のおごりです。あなただって、浴びないに越したことはないと思うでしょう?
「限界線量以下だから安全」ではなくて、人間ここまでは我慢できる、という値なだけです。だから、作業する人達の限界線量が引きあがったでしょう。
もう少し、ここまで、もう少しこの辺まで・・・。
ねえ、あなたの愛する人を我慢させたくありませんよね。

知識は大切です。騙されないために!
知識は大切です。みんなを、地球をまもるために。

でも知識を振りかざしてはいけません。
言葉と同様、知識も充分暴力になります。

政治家の皆さん、官僚の皆さん、経済の中枢におられる皆さん、どうぞ誠意をもって、日本国民を導いていってください。