その3 原発の状況と天気と風向きについてのおはなしです。

いろいろなサイトでいろいろな事が書かれていますね。
原発が臨界して通常運転していた時に核分裂でそれまでに生成されたヨウ素131は、地震と同時に全ての発電機が停止したため、臨界状態ではないので、その後ヨウ素131は生成されてはいない。だから、地震から物理的半減期の8日を過ぎたら、福島県等の露地野菜は安全だ」
どこかにこんなサイトがありました。いっていることはよく判ります。たしかに、原子炉内がどうなっているか、分かっていればその通りです。ただ一つ疑問なことがあります、臨界状態でなければ核分裂生成物質が生成されずに安全だという考えです。

臨界の意味は、『原子炉で核分裂連鎖反応が外部から中性子を供給することなしに、時間とともに増えも減りもせず一定に維持される状態を臨界という』です。
この状況下、炉内の中性子数およびその増減の状態、温度、圧力などを測定する計測器が完全に復旧されていない状態で臨界してないと事故後10日足らずで100パーセントいえたのか?出力が上昇すると燃料棒の温度が上昇し、核分裂を起こさないウラン238中性子をたくさん吸収する(ウラン238は高速中性子も中速中性子もキャッチします)その後、ウラン239になり、半減期23.5分でベータ崩壊して、ネプツニウム239になり、また、半減期2.35日でベータ崩壊してプルトニウム239になる。プルトニウム239は核分裂を起こしやすいので高速中性子や中速中性子をキャッチし核分裂を起こし核分裂生成物質が生成される。ウラン238は多量に燃料棒にはいっているから高速中性子がいて、原子炉内を飛び回っていればあり得る事ではないのか?

あと、単純に考えると1号機から4号機まで復旧がされていない現在、もし圧力が上がれば蒸気を大気中に逃がすこともあるだろうし、それによる影響などは考えられていないのかな?とか、半減期の短いものの後から半減期の長いものの値が出てくるのは想像できるし、推測で安全といえる状況ではないような気がする。

訳が分からない言葉も多いと思いますのでゆっくり考えてみましょう。

地震と同時に全ての発電機が停止というのは、電源を切って照明が消えたようなイメージではありません。すべての制御棒を原子炉内に急速に入れて原子炉内の中性子数を減らすことなのです。

制御棒って何?

「原子炉を制御するためには原子炉内の中性子数を増減させなくてはいけません。そのためには、普通、炉心に中性子を吸収しやすい物質(ホウ素やカドミウム、ボロンやハフニウム等)を含む材料でできた制御棒を駆動装置につけて出し入れしています」

何故、中性子数を減らすと制御ができるの?

原子炉は核分裂によって稼働しています。
ウラン235とかウラン238とかプルトニウム239とか聞いたことがありますよね。
この数字にはちゃんと意味があります。

ざっくり言うと、奇数は核分裂しやすくて、偶数は核分裂しにくいと考えてください。
そして、どうやって核分裂するかというと、中性子を吸収することによって核分裂します。

だから、制御棒に吸収させて中性子を減らすことが原子炉の停止というわけです。
しかし、それは、通常運転をして原子炉内を安全に保っている時に有効なことです。

高温な燃料棒を冷却する装置が津波で完全復旧できなくなった日から、原子炉の燃料棒は使用済燃料プールの管理も含めて、制御するのが困難な状況です。後手後手と東電を非難するのを耳にしますが、この状況下、炉内の中性子数およびその増減の状態、温度、圧力などを測定する計測器が完全に復旧されていない状態で、憶測がかなりの割合を占めた対処のなかで精一杯頑張ってくださっていると思います。

原子炉内の水についてや使用済燃料プールの水について、連日放送されて、みなさんも耳慣れされていると思います。

まず、冷却するため以外に何故、水が必要なのか?について考えましょう。

よく燃えるウラン235原子核中性子をうまくぶつけることは大変です。なぜなら、ウラン235から核分裂で飛び出る中性子は、とても速くて、毎秒2万キロメートルの速度なのです。これでは、速すぎてウラン235中性子を吸収できません。そこで、中性子のスピードを遅くして連続的な核分裂を可能にするものが必要です。

実は、原子炉(軽水炉)の冷却に使用されている水は、中性子のスピードを、水素に中性子がぶつかる事で遅くして「熱中性子」に変えて、連続的な核分裂を可能にする物質なのです。しかも、真水(軽水)Н2Oはコンクリートと同じようにアルファ線ベータ線ガンマ線中性子線を通さない物質ですので、放射線を遮蔽する役割をも持ちます。

じゃあ、核分裂を止めたいのなら水を入れなければ、止まるんじゃないの?
いいえ、そんな簡単なことではありません。

先ほど言った、制御して止めたい時に入れる物質(ホウ素など)は、遅い中性子に対して有効で、速い中性子に対しては、吸収が小さくなるので、これを完全に遮蔽することは簡単ではありません、だから、中性子を減速し、吸収されやすい遅い中性子にすれば効き目がある・・・ということは、「高速中性子」を速度の遅い「熱中性子」にする、真水(軽水)Н2Oが必要なのです。

水素を持つ、真水(軽水)Н2Oあっての、制御です。それに放射線を遮蔽する役割も重要です。

海水を入れているのに何故、一進一退なの?

それは、真水でなく海水をいれたためです。真水でも不純物があれば、その不純物は被曝して自らが放射線をだすようになります、だから、通常運転では、不純物を濾過する装置が原発のいろいろな系統にあって、作業する人が被曝しないように工夫されています。

海水には多くの不純物があり、それらは被曝して、放射線を出しています。緊急事態だったため苦渋の決断で入れた海水ですが、現在の足かせになっているようです。だから、東電は一刻も早く海水を真水に換えたいのです。

使用済燃料プールも、心配な状況です。たとえば、使用済燃料の中身ですが約3パーセントの核分裂生成物質がはいっています。燃えカスとか灰みたいなものです。この中にはテレビで出ている、半減期が30年のセシウム137もはいっています。東電も政府も自衛隊も消防隊も、温度上昇によって、放射線を遮蔽する役割の水が蒸発し、燃料が破損した場合大気中にばら撒かれることを防ぐため頑張っています。